Sound Design

音作り

L'Arc〜en〜Cielのギタリスト、kenのギタートーンを分析。 トーンカテゴリ別の音作りと、時代ごとのサウンドの変遷を追う。

01

Tone Categories

トーンカテゴリ

クリーントーン Clean Tone

kenのクリーントーンは、コーラスやディレイを薄くかけた透明感のあるサウンドが特徴。アルペジオやカッティングで多用され、楽曲のイントロや静かなセクションで空間を作り出す。ピッキングのニュアンスを活かすため、コンプレッサーは控えめに設定されることが多い。

クリーントーン セッティング

Signal Chain

Guitar Fernandes / Gibson Les Paul
Compressor 軽めのかかり
Chorus CE-1系 / 薄がけ
Delay アナログ系 / 短め
Amp Clean Ch Marshall / Bogner

Representative Songs

  • 花葬(イントロ)
  • Pieces
  • あなた
  • Spirit dreams inside
  • snow drop

Key Points

  • ピッキングダイナミクスを最大限に活かすセッティング
  • コーラスは空間を広げる程度に薄くかける
  • ディレイはスラップバック〜短めの設定が基本
  • アンプのクリーンチャンネルでヘッドルームを確保
  • ギターのボリュームコントロールでゲインを調整
クランチ Crunch

kenのサウンドの核とも言えるクランチトーン。アンプの歪みを活かしたナチュラルなブレイクアップで、ピッキングの強弱によりクリーンから軽い歪みまでを行き来する。リフやバッキングの主力であり、バンドアンサンブルの中で抜けの良いミッドレンジが際立つ。

クランチ セッティング

Signal Chain

Guitar Gibson Les Paul / PRS
Overdrive TS系 / ブースター的使用
Amp Crunch Ch Marshall JCM系 / Gain控えめ
Cabinet 4x12

Representative Songs

  • HONEY
  • READY STEADY GO
  • Driver's High
  • Link
  • STAY AWAY

Key Points

  • アンプのゲインを上げすぎず、ピッキングで歪み量をコントロール
  • オーバードライブはブースターとして使用し、ミッドを持ち上げる
  • ギターのボリュームを絞ればクリーンに近づく汎用性
  • ミッドレンジを中心とした音作りでバンドの中での存在感を確保
  • コード弾きでも音が潰れないバランス感
ハイゲイン / ディストーション High Gain / Distortion

AWAKE期以降に顕著になったヘヴィなディストーションサウンド。ダウンチューニングやドロップチューニングと組み合わせ、モダンでアグレッシブなトーンを構築。ミュートリフやパワーコードでの圧力のある低音が特徴的で、tetsuのベースと噛み合うローエンドの処理が鍵。

ハイゲイン セッティング

Signal Chain

Guitar Les Paul / 7弦 / ドロップチューニング
Noise Gate タイトなミュート
Distortion ハイゲイン・ペダル or アンプ直
EQ ローミッド強調
Amp High Gain Ch Bogner / Diezel / Mesa
Cabinet 4x12 クローズドバック

Representative Songs

  • AWAKE
  • Killing Me
  • REVELATION
  • NEXUS 4
  • CHASE

Key Points

  • ゲインは高めだが、音の輪郭を失わないセッティング
  • ノイズゲートでミュート時のタイトさを確保
  • ローエンドはベースと被らない帯域処理
  • ダウンチューニング時は弦のテンション管理が重要
  • モダンアンプのハイゲインチャンネルを積極活用
アコースティック Acoustic

バラードやアンプラグド的なアレンジで使用されるアコースティックサウンド。kenはエレアコを使用することが多く、ピエゾピックアップの硬質な音をプリアンプやEQで補正し、温かみのあるトーンに仕上げる。ライブではエレキとの持ち替えもスムーズに行う。

アコースティック セッティング

Signal Chain

Acoustic Guitar エレアコ / ピエゾPU
Acoustic DI / Preamp 音質補正
EQ ピエゾの硬さを補正
Reverb ルーム〜ホール系
PA / Amp アコースティック用

Representative Songs

  • Pieces
  • あなた
  • 瞳の住人
  • My Heart Draws a Dream
  • finale

Key Points

  • ピエゾPUの特性を理解したEQ補正が重要
  • ミッドの共振を抑えてナチュラルなトーンを目指す
  • リバーブで自然な空間感を演出
  • ライブではフィードバック対策も必須
  • レコーディングではマイク録りとのブレンドも活用
空間系エフェクト Spatial Effects

kenのサウンドを特徴づける要素のひとつが空間系エフェクトの巧みな使い方。ディレイ、リバーブ、コーラス、フランジャーなどを駆使し、楽曲に奥行きと浮遊感を与える。特にディレイのタイム設定はBPMに同期させ、楽曲のグルーヴと一体化させるアプローチが特徴的。

空間系エフェクト セッティング

Signal Chain

Guitar メインギター
Drive Section メイントーン
Chorus / Mod 揺れ系 / 薄がけ
Delay BPM同期 / 付点8分
Reverb ホール / シマー系
Amp エフェクトループ使用

Representative Songs

  • 花葬
  • forbidden lover
  • DIVE TO BLUE
  • winter fall
  • Shallow Sleep

Key Points

  • ディレイタイムはBPMに同期させてリズムと一体化
  • 付点8分音符ディレイでU2的な広がりを演出
  • コーラスとディレイの組み合わせで独特の浮遊感
  • リバーブはプリディレイを設定し、音の明瞭さを維持
  • エフェクトループを活用して歪みの後段に空間系を配置
  • ウェット/ドライのバランスで楽曲の雰囲気を繊細にコントロール
02

Sound Evolution

サウンドの変遷

1993–1994

DUNE / Tierra期

DUNETierra

結成初期のkenのサウンドは、ガレージ的な荒々しさとインディーロックの生々しさが共存するスタイル。当時の機材はシンプルで、アンプ直に近いセッティングからダイレクトなサウンドを引き出していた。まだ模索の段階でありながら、後のkenサウンドの原型となるミッドレンジを活かしたトーンは既に芽生えていた。

DUNE / Tierra期のkenの機材写真

Characteristics

  • 荒削りでガレージ的な歪みサウンド
  • シンプルなエフェクト構成(ほぼアンプ直)
  • ミッドレンジを軸とした音作りの原型
  • コーラスやディレイは控えめな使用
  • Fernandesギターを中心とした機材構成

Key Gear

  • Fernandes ギター
  • Marshall アンプ
  • BOSS エフェクター(基本的なもの)
1995–1996

heavenly / True期

heavenlyTrue

バンドがメジャーシーンで頭角を現した時期。kenの音作りもより洗練され、クリーントーンの美しさとクランチの使い分けが明確になった。楽曲のポップ性が増す中で、空間系エフェクトの導入が進み、アルペジオやクリーンパートでの表現力が飛躍的に向上。プロデューサーとの仕事を通じてレコーディングでの音作りの知見も深まった。

heavenly / True期のkenの機材写真

Characteristics

  • クリーンとクランチの使い分けが明確に
  • 空間系エフェクトの積極的な導入
  • アルペジオでの繊細な表現力の向上
  • レコーディングを意識した音作りへの変化
  • よりポップな楽曲に対応した柔軟なトーン

Key Gear

  • Gibson Les Paul
  • Marshall JCM900
  • BOSS CE-1 / DD系ディレイ
  • ラックエフェクター導入
1998

HEART期

HEART

yukihiroの加入によりリズムセクションが刷新され、kenの音作りにも大きな変化が訪れた。yukihiroのプログラミングやエレクトロニクスの素養がバンドサウンドに新たな次元を加え、kenもそれに呼応するように音色のパレットを大幅に拡張。ディレイワークの高度化、エフェクトの重ね掛けなど、実験的なアプローチが増えた時期。

HEART期のkenの機材写真

Characteristics

  • yukihiro加入による音色パレットの拡張
  • エレクトロニクスとの融合を意識したトーン
  • ディレイワークの高度化(BPM同期など)
  • エフェクトの多層的な使用
  • ポストロック / シューゲイザー的な要素の芽生え
  • より実験的で冒険的なサウンドメイク

Key Gear

  • Gibson Les Paul Custom
  • Marshall + Bogner
  • Line 6 DL4
  • ラックシステムの本格化
1999–2000

ark / ray / REAL期

arkrayREAL

kenのサウンドメイクが頂点に達した時期。arkのヘヴィ路線とrayの繊細な路線を同時に極め、対照的な2枚のアルバムを同日リリースするという偉業を成し遂げた。ハイゲインとクリーンの振り幅は過去最大となり、1曲の中でも多彩な音色を切り替える技術が確立。REALではライブバンドとしてのダイナミクスも追求された。

ark / ray / REAL期のエフェクターボード写真

Characteristics

  • ヘヴィからクリーンまで過去最大の振り幅
  • arkのダーク&ヘヴィなトーン
  • rayの繊細で美しいクリーン / アルペジオ
  • 1曲内での多彩な音色切り替え技術の確立
  • ライブでの再現性を考慮した機材構成
  • 実験と完成度の高い両立

Key Gear

  • Gibson Les Paul各種
  • PRS Custom
  • Bogner Ecstasy
  • Eventide ラックエフェクト
  • 大規模ペダルボード
2004–2005

SMILE / AWAKE期

SMILEAWAKE

活動再開後、kenのサウンドはよりヘヴィでモダンな方向に進化。特にAWAKEではダウンチューニングを多用し、ニューメタルやオルタナティブメタルの影響を取り入れたアグレッシブなトーンが全面に打ち出された。同時にSMILEでのポップなアプローチも健在で、両極端を行き来する音作りの幅広さが際立った。

SMILE / AWAKE期のkenの機材写真

Characteristics

  • ダウンチューニングの本格導入
  • ニューメタル / オルタナメタルの影響
  • モダンハイゲインアンプの採用
  • よりタイトでアグレッシブなリフワーク
  • SMILEでのポップさとAWAKEのヘヴィさの対比
  • デジタルエフェクトの活用拡大

Key Gear

  • Gibson Les Paul / 7弦ギター
  • Diezel Herbert
  • Mesa Boogie Rectifier
  • デジタルマルチエフェクト
2007–

KISS期〜

KISSBUTTERFLYARENA TOUR MMXX

成熟期に入ったkenのサウンドは、これまでの経験をすべて統合したバランスの良いトーンへと収束していく。過度な実験や極端なセッティングは影を潜め、楽曲に最も適した音色を的確に選択するアプローチが確立。ライブでの再現性と安定性も重視され、プロフェッショナルとしての完成度の高いサウンドメイクが特徴。

KISS期〜のkenの機材写真

Characteristics

  • 過去の経験を統合した成熟したトーン
  • 楽曲に合わせた最適な音色選択
  • ライブでの安定性と再現性を重視
  • ヴィンテージとモダンのバランス
  • ソロプロジェクトでの経験のフィードバック
  • 必要最小限で最大効果を出すセッティング

Key Gear

  • Gibson Les Paul Standard
  • Kemper / Fractal (ライブ)
  • Bogner (レコーディング)
  • コンパクトエフェクター厳選

※ 機材情報やセッティングは公開されている情報および筆者の分析に基づいています。実際の使用機材とは異なる場合があります。
※ 情報は順次更新・修正していきます。